【イベントレポート】いま生きづらさを感じる若者たちのために大人ができること。知ることからはじめる共感の輪
近年、「生きづらさ」を感じる若者・子どもたちが増えています。全国の小中学生を対象にした不登校に関する調査では、2022年に前年度と比較し2割増の30万人*1に達しました。また、LGBTQの人々は人口の9.7%*2を占めており、彼らもまた多くの困難を抱えています。(*1 文部科学省:令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果、*2 電通グループ:LGBTQ+調査2023)しかし、まだ多くの人々にとってこれらの課題は身近に感じられていないのが現状です。
「これらの問題を放置してはいけない」と、民間から課題の解決に向けて動き出している方々がいます。
今回のイベントでは、フリースクールやLGBTQセンターを運営し、クラウドファンディングに挑戦中の3団体の代表にご登壇いただき、これらの問題を解決するために、どのような取り組みをされているのかを、CAMPFIRE代表取締役である家入一真が深堀りしました。
家入:僕自身、中2の時にいじめをきっかけに学校に行けなくなり、家で絵を描いたりプログラミングを独学で勉強したりする10代半ばを過ごしました。10代の時って、学校が自分にとって世界のすべてで、その世界からこぼれ落ちてしまった感覚を今でも覚えています。今になってみると、世界はもっと広いよ、と当時の僕に言ってあげたいです。同じように、今この瞬間も生きづらさを抱えて、孤独に苛まれている子もいるんじゃないかと思います。今日ご参加の皆さんは、小中高生を対象として活動されていると思うのですが、皆さんの活動のなかで、どう彼らの「生きづらさ」と向き合っていらっしゃいますか?
生きづらさは、選択肢が少ないことからやってくる
水取:家入さんがおっしゃったように、「選択肢が少ない」ということが生きづらさにつながっているように感じます。僕が運営しているフリースクールには、企業に就職することがゴールじゃない子どもたちもたくさんいます。現在は働き方も多様化しており、就職と進学以外にも、フリーランスや起業も選択肢にあるんだよ、ということを伝えてあげたいです。
家入:僕は当時の自分みたいな子が来れる場所として、シェアハウス「リバ邸」を運営しているのですが、そこでいろんな大人とふれあうことの大事さを強く感じます。世の中には、いろんな仕事・働き方・生き方があるはず。でも、僕は親か先生としか接してこなかったので、学校に行けなくなった瞬間に世界が閉ざされてしまったんですね。いろんな大人たちとふれあっていく場所があると、選択肢が広がっていくと思います。
松下:僕は運営しているフリースクールの子どもたちに「進路は食べ放題のバイキングと一緒」って伝えているんです。バイキングのように選べるから楽しいんだと。進路を選ぶ時、好きなものを好きなように選べて楽しいはずなのに、視野が狭まっているとしんどくなってしまうのではないかと思います。だからこそ、子どもの時からいろんな生き方に触れて、世界を広げることが大切なんです。不登校の子だけじゃなくて、学校に行っている子も、日本社会に生きる大人も、もっともっと視野を広げて楽しく生きられたらいいと思います。
安心できる居場所づくりが、生きづらさをやわらげる
村木:私は、LGBTのためのセンターを運営しています。LGBTの子って、だいたいクラスに1人か2人いると言われています。多いようですが、クラスに自分だけかもしれない、と心理的に孤立している子が多いと思います。「自分の子どもがLGBTだったらいやだ」と答える親は残念ながら半分ほどいるんですね。一方、学校に行くと、男の子用・女の子用で文具が分かれていて居心地が悪かったり、男らしくない・女らしくないといじめられたり、いじられたり。家にいても学校にいても、自分らしくいられないんです。だから、うちのセンターでは安心できる居場所づくりを目指しています。センターには、これでもか! というくらいLGBTのシンボルである虹をたくさん飾っています。そこまでしないとなかなか安心して過ごせないんですよね。
選択肢がたくさんある状況のために大人ができること
ーー(司会)参加者からの質問です。幼少期から生きづらさを原体験として感じているのですが、小さい頃から選択肢がたくさんあったほうがいいのでしょうか。選択肢がたくさんある状況にするには、どうしたらいいでしょうか。
松下:選択肢で言うと、日本では、ついベストを教えてしまいがちだと思うんです。そのベストも、誰かが作ったベストであって、本当は、人によってベストは違います。だから大事なのはベターを教えてあげること。決めつけたベストではなく、余白を残してあげることが重要で、大人が子どもにベターをたくさん用意してあげることが、「選択肢がたくさんある状況」なのではないでしょうか。
水取:子どもたちに選択肢を知ってほしいという時には、やっぱり大人が選択肢を知ることだと思うんですよね。フリースクールを運営していますが、フリースクールという選択肢を知って「よかった!」という声は大人や先生からも聞かれます。選択肢を知ることは、子どもだけじゃなくて保護者、大人、みんなにとって必要なことだと思います。
居場所づくりにまつわるお金の課題
家入:では、少し話題を変えて、居場所づくりについて聞きたいと思います。非営利の運営で、継続性を考えたときに、経済的なことや、社会的なこと、両輪で考えていく必要があると思うのですけれども、課題について教えていただけますか。
村木:地方で大規模なLGBTQセンターって、今まで日本にはありませんでした。実際に運営してみて、ずっと家賃が出ていくこと、ずっと人が張り付いていなくてはならないことが、とても大変なことだとわかりました。LGBTについては、新しい分野なので国も自治体も全然予算がないんです。今回のクラウドファンディングは、プロジェクトベースで、個人の支援者の方とつながれるのでありがたいですね。正直、個人の方からお金を募るということはプレッシャーだったのですが、改めて連絡してみると、コミュニケーションのきっかけになってよかったな、と思います。
松下:家入さんにずっと聞きたかったことがあります。今回僕はCAMPFIREで4回目のクラウドファンディングを実施しているのですが、やっぱりどうしても支援をお願いすることが気まずいんです。僕らは、不登校という社会課題に取り組んでいて、応援してくれている方々の思いがお金という形になっている、ということで納得しているのですけれども、お金をいただくということについて、どうやって捉えたら気が楽になりますか?
家入:そういった声もよくお聞きするのでとてもわかります。やっぱりまだクラウドファンディングを立ち上げるときに、不安だったりハードルだったり感じることについては、僕らがもっと頑張っていかなければならないなと思っているところです。一方で、僕もクラウドファンディングをたくさん支援していて、その時の個人的な気持ちとしては、プロジェクトの一員になるような、参加料を払って仲間に加わるような気持ちなんです。
水取:僕もやっぱりどこかで引っかかってるところがありました。そんな時に、マンスリーサポーターの方へお礼を連絡したときに、「そんなに何度もお礼を言わなくていいよ、君は僕のできないことをやってくれているから寄付という形で参加させてもらっている、報告をしてくれれば、一緒に子どもたちを包み込んでいる気持ちでいるから、胸を張って活動していってほしいんだ」と言われてとても心に残っています。だから、いかに一緒に参加している感覚を作っていくかなのかな、と考えています。
水取:クラウドファンディングについては、共感されやすいテーマか、共感されにくいテーマかってすごく重要だと思うんですよね。不登校の子どもたちの問題も、LGBTの問題も、なかなか共感されにくいんです。学校に行く子どもがほとんどの中で、マイノリティの子どもたちにどう共感してもらうかは、僕たちの発信や子どもたち、保護者の方々の声をどう社会に伝えていくかが必要だと考えています。
家入:どうやったら共感を広げていけるか、まずは知ることなんだなと今日3人のお話を聞いて強く感じました。自分が当事者じゃなくても、理解して共感できるということが大切ですね。
今回トークイベントにご参加の3団体が実施中のクラウドファンディングはこちらです。まずは知ることから。ぜひそれぞれのプロジェクトの挑戦をご覧ください。
村木 真紀さん:認定NPO法人 虹色ダイバーシティ
#LGBTQについて学べたり、安心できる場を継続して運営
#特に中高生向けプログラムを強化し、修学旅行で訪れるような拠点へ
#地方のLGBTQセンターの持続可能な運営モデルに
松下 祥貴さん:NPO法人ろーたす
#フリースクールの後ろめたさをなくしたい
#広報・啓発機能の強化
#摂南大学の元学長さんとコラボした新しい学習プログラムの実施
水取 博隆さん:NPO法人キリンこども応援団
#生きづらさを感じる若者たちで民泊運営
→高校生が自分の得意を活かし、ビジネススキルを磨き視野が広がるきっかけに
#空き家の活用
#自分たちで「自分らしく」働ける環境を
以上の3つのプロジェクトは、大阪府と村上財団の「NPO等活動支援による社会課題解決事業」に採択されています。
この事業では、クラウドファンディングを行う団体が集めた資金と同額が、村上財団からマッチング寄付として提供されます。
そのため、あなたのご支援が2倍になって各団体に届きます。大阪府から社会を変えていく挑戦に、あなたも参加してみませんか?