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クラウドファンディングで知った支援者の想い。加熱寿司を絶やさない決意へ

生ものが食べられない方でも安心して食べられる、深部まで火を通したお寿司「加熱寿司」を届けるクラウドファンディングが実施されました。妊娠中も食べられるお寿司を望む声が多くあり、結果として249人から目標金額の1,113%もの支援が集まりました。プロジェクトを立ち上げた渡邊愛さんに、クラウドファンディングへの挑戦と、その後について聞きます。

妊娠中のつぶやきから始まった加熱寿司

ーーまず、加熱寿司のスタートについて教えてください。

妊娠が発覚した時、「おめでとうございます、今日から生もの食べないで下さいね」と産婦人科医に言われました。しかし、妊娠中期の頃に「妊娠中でも、おいしいお寿司が食べたい」という気持ちが我慢の限界に達してしまいました。どれだけ調べてみても私の欲求を満たすものはなく、妊婦も安心しておいしく食べられるお寿司が必要だと強く感じました。一方で、それが私だけの欲求であれば価値は無いなと考え、2020年の12月にこんな投稿をX(旧Twitter)にしてみました。

すると、「妊娠中にあったらすごく嬉しい」「我慢しなくても食べられるのなら今すぐ食べたい!!!」などと想定以上の数の反響をいただき、たくさんの妊婦さんの想いに触れることができました。そこで、友人の行きつけのお寿司屋さんに協力してもらい加熱寿司セットを開発し、SNSでの告知で数量限定で店頭で販売してみたり、レンタカーで加熱寿司を届けてみたりと、価値を感じてくれる方と直接会話をし、手応えが増していきました。妊娠中に個人で進めていたこともあり、お金も時間も無かったため、スピード感とコストを重視しながら、その後も4回ほど仮説検証を繰り返し、「加熱寿司が求められているか」を少しずつ確かめて歩みを進めてきました。

ーー小さくスタートして、徐々に加熱寿司を育ててきたんですね。

はい。私が食品会社で働いていた時、色々考えて時間・お金・労力などを投資して世の中に出したけれど、結果無風に終わった、ということを数えきれないほど見てきました。だからこそ、少しでも多く「価値があるか」を検証した上で、発売に至る方法を考えました。

ーーSNSでの積極的な発信も印象的でした。

妊娠中に開始したプロジェクトで、子供が生まれてからも慣れない育児をしながら遂行する使命感など、その時々の悩みや喜びを自然とつぶやいていたんですよね。いち妊婦のリアルな葛藤の投稿に、たくさんのママさんから共感や励ましの声がありました。
皆さんの期待の声に応えたい思いもあり、次のステップとして、より多くの人に加熱寿司をを届けるために挑戦したのがCAMPFIREでのクラウドファンディングです。

クラウドファンディングで挑戦したかったことは、今まで検証できていなかった、加熱寿司をゼロから、魚の仕入れからお客様の口へ届けるまでを、本当に自分でできるのか?という実現の可能性を確かめることです。また、実際にお金を払って加熱寿司を欲しいと思ってくださる方はどれくらいいるのか、最終の価値確認としてクラウドファンディングを選びました。

自分で実施する前までは、クラウドファンディングは募金や資金集めといったイメージが強かったのですが、多くの方から応援のDMをいただいて、クラウドファンディングは、仲間集めでもあるのだなぁと感じました。実際にメンバーとして事業を手伝ってくださる方まで現れました。

「贈る方も嬉しい」加熱寿司の意外だった価値

ーー印象的だった支援者の方とのエピソードはありますか?

ある日、突然写真が送られてきたんです。60歳くらいの方が笑顔で加熱寿司を食べている写真で、「母が亡くなりました」というメッセージと一緒でした。

詳しくお話を聞くと、骨髄移植で大好きなお寿司を食べれなくなってしまったお母さんに、亡くなる前に加熱寿司をプレゼントできて、母がとても喜んでくれたし、自分自身がとても救われました、というお話でした。コロナ禍で遠方に住んでいて、母に何もしてあげられない……と無力感を感じていたところに、できることを見つけられて本当に嬉しかった、と。
当初想定していた妊婦の方以外からの反応でしたが、貰い手だけでなく、贈り手にも喜んでもらえる体験を届けられて、鳥肌が立ちました。

ーーもらう方が嬉しい、というのは想像できますが、贈り手の方も嬉しくなる加熱寿司なんですね。

もしかしたら、贈り手も貰い手と同じくらい喜びを感じてくれているかもしれません。前述のお母さんへ加熱寿司を贈った方も「私の方がもっと救われたかもしれません」とおっしゃっていて。

この方に限らず、支援者の方にお願いしてヒアリングをさせていただいたのですが、「頑張る妻にしてあげられることをやっと見つけた」という男性からの声が多かったです。妊娠中って、男性側がいいパートナーでありたい、何かしてあげたい、と思っても、できることがなかなか見つからない、というお話をよく聞きます。そこで加熱寿司を知り、とても価値を感じていただけるようですね。今は肌感として、加熱寿司の7割くらいがギフトとして購入されているように感じます。また、実は購入者の6割くらいが男性なんです。

食のストレスを抱えるすべての方へ。おいしく安心して食べられるお寿司を届け続けたい

ーークラウドファンディングが成功した加熱寿司のその後はどうなったのでしょうか?

クラウドファンディングで、加熱寿司をたくさんの人へ届けることの実現可能性と、実際に価値に対してお金を払っていただけるのかの確認がしっかりできました。また、想像していた以上に多くの方が望んでくださっている加熱寿司を、一度きりのプロジェクトとして辞める、という選択肢はもうありませんでした。

限られた時間の中で、私がいかに世の中に価値を届けられるのか考えた結果、勤めていた会社を辞め、独立して加熱寿司を届け続けることに決めました。

クラウドファンディングを体験していなかったら、独立する決心はつかなかったかもしれません。独立をして、加熱寿司のプロジェクトに取り組み続け、クラウドファンディングから約1年後に一般発売をし、発売から5分で完売する結果となりました。

ーー加熱寿司のこれからについて教えてください。

大きく2つあります。ひとつは、引き続き妊娠中の方へ加熱寿司を届け続けること。例えば、クラウドファンディングを実施したこともあり、2022年の妊婦さんには、多くの方へ加熱寿司の価値が届いたけれど、それ以降の妊婦さんは加熱寿司をあまり知らないかもしれない。その年、その年の妊婦さんへ加熱寿司というものがあるよ、と選択肢を知らせることが責務だと思っています。

もうひとつは、がん患者の方など何かしらの病気が原因で生ものを控えている方へ改めて価値を届けたいと考えています。これまで、がん患者の方、あるいはそのご家族から多くのお問い合わせをいただきました。直接お話を聞かせていただく中で、もしかしたら一生なまものを食べれないかもしれない、という辛い気持ちを抱えていらっしゃることを知りました。価値を感じてくれている方がいるのに、私自身がそれを狭めてはならないため、しっかりとお話を聞かせていただきながら、進めていきます。

食のストレスを抱えるすべての方へ、安心しておいしく食べられる加熱寿司を届け続けていきたいです。


ご自身の体験を元に多くの応援と共感を得て誕生した加熱寿司。確かなニーズがあるからこそ、期待に応えるために慎重に検証を重ね、着実に形にしていく渡邊さんに心を打たれました。

「CAMPFIRE」はどなたでも仲間集めや資金調達ができる国内最大級のクラウドファンディングサービスです。あなたも「CAMPFIRE」で社会課題の解決や、新たな夢への挑戦をしてみませんか。


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