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【イベントレポート】地方創生から10年。いま、伝えたいこと|TURNS・CAMPFIRE

2024年は、まち・ひと・しごと創生法が2014年に施行され、地方創生の取組が本格的に始まってから10年の節目を迎えます。この間に何が成し遂げられ、そしてここから私たちはどう地方と向き合うべきなのでしょうか。

メディアとして地域課題を発信し、移住、関係人口創出で多くの人を送り込んでいるTURNS。クラウドファンディングで地方の課題に寄り添い、数多くのプロジェクトを創出して解決を支えてきたCAMPFIRE。

今回のトークセッションではTURNSプロデューサーである堀口正裕さんとCAMPFIRE代表の家入一真が10年を振り返りながら、これからの地方創生には何が必要かを語りました。

地方創生から10年。いま感じる地域の可能性とは

家入:人口がどんどん減っていき消滅可能性都市なんていう言葉もあるなかで、一人一人がその地域の魅力を掘り起こしながら新しいチャレンジをしていることに、地域の可能性を感じています。

堀口:地域の可能性について思うことといえば、”地域の底力”に注目しています。島根・石見銀山を拠点とする世界的な義肢装具メーカーの中村ブレイスという会社は、創業以来自分たちで古民家をずっと再生し続けているんです。その古民家には今何十人もの社員さんが住んでいます。事業として、世界中で体の一部を失った人たちに寄り添いながらも、一方で地方創生が強く叫ばれる前から、過疎の町になってしまった石見銀山を復活させたいと活動してきた。現在では、待機児童が出てくるくらい子供が増えてきたんだそうです。
また、富山県南砺市の井波の彫刻ってご存知ですか?すごいと思うのが、70年以上前からずっと、伝統を守るために第三者による継業ができるような制度を作ってきているんですよね。戦後まもない頃から先々のことを意識してきた。
中村ブレイスさんの地域資源の活用だったり、井波の彫刻の継業のしかただったりという、地域の底力が、地域の可能性に繋がっていくのではないかと思います。

堀口:その土地の地域性を活かして始めた事業だったけれども、そこからヒントを得たプロジェクトが別の土地でもうまくいくことってあるじゃないですか。地域のプロジェクトを積極的に外へ発信するということが活発になってきていると感じます。

家入:インターネットやテクノロジーが普及したからこそ、いろんな地域で生まれている活動がシェアされていますよね。ひらかれた新しい地域コミュニティのかたちがあるんじゃないのかなって信じています。

ひとりひとりの顔が見える地域との関わり

家入:ひらかれた地域の話で、「関係人口」って、言葉としても概念としても発明だったと思うんです。(※「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指します。 総務省HPより)移住か観光かではなく、地域のコミュニティの外にも関わるグラデーションができました。一方で、最近感じていることとして、行政が関係人口をKPIにし始めた途端に、関係人口が単なる数字になって、その瞬間に人の顔が見えなくなってしまう怖さがあると感じるんです。

堀口:例えば「わたしは関係人口のひとりです」という方に取材するとして、なぜその人がその土地に関わり始めたかを紐解いていくと、惚れ込んだ人がいたりして、直接話を聞かないとわからない相関図が見えてくるのが面白いんですよね。家入さんが言うように、顔が見えなくなる怖さはあるので、伝え方は気をつけなくちゃいけないなと思います。

家入:僕自身もいろんな地域の関係人口のひとりとしていろんな地域に関わりたいなと思うのですが、関係人口が便利な言葉すぎて、何も考えないで使ってきてしまったな、と最近になってふと反省しました。関係人口という言葉の本質ってなんだろうな、って。
それと同じで、「地方創生」という言葉についても、本質ってなんだろうと思うことがあって。僕は、地方創生とは、民間発で地域が盛り上がっていくことだと認識しています。その中で個人を中心として小さなプロジェクトを立ち上げて、その結果、漏れ伝わっていく魅力が地方創生の本質だと思っています。

民間と行政が一緒に、課題を解決する先進国へ

家入:2014年から10年が経って、これからの地方創生はどうあるべきなのでしょうか。

堀口:「地方公務員アワード2023」を受賞された愛知県豊田市の上下水道局の岡田さんという方がいらっしゃるのですが、人手不足が問題になるなか、AIと衛星の技術を使えば水道の漏水箇所の予知検出がかなりの精度でできることを知り、 この技術を豊田市で活用したところ、他地域でも活かされるようになったそうなんです。
他の地域でも喜ばれる事例を集めていくと、日本が今取り組んでいることってなかなか面白いね、となると思うんですよね。僕らが取材をするようなプレーヤーの方々って韓国や台湾からも講演依頼が届いているんです。「課題先進国」ではなく、今後は「課題解決の先進国」として堂々と発信できる事例をたくさん集めて発信していきたいと思います。

家入:行政も含めて自治体が変わっていかなければならない部分もあるのでしょうね。地方創生ってトライアンドエラーが大事で、たくさんの挑戦と失敗を繰り返していく必要があるなかで、行政はなかなか失敗が許されない構造を持っていて、新しいチャレンジを許容できなかったり、小さく立ち上げて小さく回すことはなかなか難しいです。でも、これから変わっていって民間と行政が一緒に取り組んでいけるようになるといいですね。面白くなりそうです。

日本のローカルから課題解決を世界へ発信

家入:人口がどんどん減っていくなかで、たしかに自治体としては存続不可能になっていくエリアはあるでしょう。でもそこで育った人の暮らしや伝統、文化は消えることはない。そこで引き続き生きていかなくちゃいけない人々がいるなかで、これから第二の自治体を作っていかなければならないと思います。
日本の地域で今起きていることは遅かれ早かれ他の国も向き合っていかなければならない課題でもあります。先端を行っている日本が持っている事例を欲しているはずなので、日本が輸出できるモデルや事例を作っていくのではないかな、と思います。50年後、都市への一極集中は継続して進みながらも、それぞれの地域では新しい自治が進んでいくだろう、というイメージを持っています。

堀口:すでに海外を意識して新たなマーケットを開拓されてる事例もたくさんあって、期待感がありますね。日本のGDPは世界的な競争力が下がっていますが、稼ぐ力をもっとつけていかなくちゃいけないと思います。地域が誇る「本物」が世界で評価される事業が、地方からどんどん生まれていく国になったらワクワクしますね。


TURNSとCAMPFIREのこれから。地域クラウドファンディングのその後までを

TURNSとCAMPFIREが組み、2社のアセットを活用して、全国の地域で挑戦している人、挑戦したい人を応援する「TURNS CROWDFUNDING」をローンチ予定です。

とくに、TURNSの力をお借りして、クラウドファンディングを実施したことによって実現できた様々な物語の発信をしていければと考えています。TURNSとCAMPFIREの今後の取り組みにどうぞご期待ください。